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個別記事の管理2016-05-28 (Sat)
■やさしいおじさん
今ならば、なぜここまで落ち込んで、諦めてしまっていたのかと思う。
もう走れないという思いが、とにかく強くて、ただ歩いていた。

もう次のエイドでリタイアしよう……
そう思って、嫁にLINEで連絡を入れる。
さらにしばらく歩くと、反対側の道路に60キロの計測地点がある。
もう、自分はあそこに行くことはないんだなと漠然と思う。

その間にも、まだランナーが追い抜いて行く。
よく走るなぁと思う。今から走って間に合わないだろうに…
私の計算では、30分遅れまでは許容できるけれど、それ以上は残り20キロが間に合わない。もう歩き始めて1時間くらいにもなるから遅れは30分で済まない。

……ん? そう思い込んでいたけど、本当に間に合わないの?
間に合わないなら、なんでみんな走ってるの…?

関門時間を確認するのがイヤで、手元のペース表を見ていなかったけれど、これだけのランナーが走っているということは、まだ間に合うんじゃないのか?

そう思って、ちょっとだけ走ってみる。
あれ、なんか走れるかも? あ、でも動いたらトイレに行きたい。ぎゅーっとガマンしなきゃ、やばそうな気配。これはトイレに行かなきゃ、走れない。

そう思っていたら、目の前にガソリンスタンド。ちょうど、ガソリンスタンドのトイレから女性ランナーが出てきた。
スタンドのおじさんにトイレを借りていいか聞くと、快く貸してくれる。
スッキリして出てくると、信州の水はおいしいよと水飲み場で水を勧めてくれる。

改めてゴクゴクと飲んで、顔を洗う。
ありがとうと言うと、頑張ってと応援してくれる。
そのにこやかさに、自然と顔がほころんだ。

何だか気持ちが楽になっていた。
ガソリンスタンドを出たあとも、上りが続いてすぐには走れないけれど、目の前がスッキリした。
すると、見えていないものが見えてくる。

そうか、もうすぐ折り返しだ。折り返せば下り坂になる。
もしかして、下りなら走れるんじゃないの?
ずっと走らなくてもいい。ウルトラ走りでもいい。
走れれば、先に進める。
エイドでリタイアと思っていたけど、リタイアするなら、試してみてからでも遅くない。

急に目の前が晴れたような気がした。
さっきまでの暗い思考が嘘のようだ。
コインが裏から表に変わったかのように、目の前がくっきりしている。
早く、早く折り返したい!


■ウルトラに復活はある
横断歩道を渡り、反対側からエイドのある広場に下りる。
広場の左奥には、リタイア受付があり、テントのブルーシートにはたくさんのランナーがいた。みんな下を向いたり横になったり、座っている人もうつろそうな目をしている。

ほんの10分前なら、自分も躊躇なくあそこにいただろう。
でも、今は全くそんなこと考えられない。早く先に進みたい。
ずっと持っていたおにぎりは、申し訳ないけどそこでゴミに捨てた。

エイドにあったオレンジとぶどうをもらって、来た道を戻る。
戻る時に携帯を取り出したら、嫁からLINEがきていた。



ホイミ!
うん、ホイミだ。
そして、走り始める。

最初は20m。足が重たい。
でも、それを我慢して走る。
そこから、次の電柱まで。
足が重たくなっても、息が上がってきても、走る。
徐々に走る距離を延ばす。

歩いていたとはいえ、長いこと走らなければ足も固まる。
それをゆっくりと、でも確実に走るうちに、リズムが出てくる。
ちょうど数十メートル先を女性が走っている。
失礼ながら、目標とさせていただく。

走れるようになったといっても、キロ7分を超えている。
それでも、歩いている時よりも、ずっと早い。
あっという間に60キロのエイド。



歩いていた時は、あんなに遠いと思ったのに、走れたらこんなに近かったなんて。

もう走るのに不安はない。
完全に復活した。

ウルトラに復活はある。
野辺山最初の復活だった。

(続く)


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Theme : マラソン大会 * Genre : スポーツ * Category : 野辺山ウルトラ2016
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